近隣住民とのトラブルや万が一の空き家窃盗などの犯罪に備え、防犯カメラを自宅に設置したいと考えている方の中には「カメラを設置することでかえってトラブルを招かないか」を心配する方もいるのではないでしょうか。カメラの機能上近隣住民の個人情報の扱いがどうなるのか、また思いがけないプライバシーの侵害が気になりますよね。この記事では個人が自宅に防犯カメラを設置することは違法なのかどうか、トラブルを防ぐための正しい設置方法について解説します。
防犯カメラの自宅への設置は違法?
結論を先に提示すると自宅に防犯カメラを設置することそのものは違法ではありません。
ただし、設置方法によってはプライバシーの侵害となり、違法となるケースもあります。
あくまで自宅の防犯目的に適した設置方法になるように気をつける必要があります。
個人情報保護法とは?違法なケースの見分け方もご紹介
自宅に設置した防犯カメラが合法か違法かを分ける一つの要素に個人情報の扱い方が挙げられます。個人情報とはその名の通り個人の氏名や顔、生年月日など個人を特定するのに十分な情報を指します。個人情報保護法はこの個人情報が他者に特定されることを防ぐために制定された法律になります。
防犯カメラの場合、撮影・録画した写真や動画は個人を特定しうるデータとして個人情報に該当しています。後述しますが適切な設置で撮影されたデータそのものは違法にはなりません。しかし、その写真や映像が故意的か否かに関わらず、何らかの理由で外部に流出すると個人情報保護法に違反し、責任を問われる恐れがあります。
つまり、防犯カメラを設置すること自体が違法なのではなく防犯目的の範疇から外れた防犯カメラの使い方でプライバシーを侵害しうる場合、また防犯カメラで取得した個人情報を漏洩してしまった場合に違法となるのです。
自宅での防犯カメラが違法になるケースとは
具体的に違法となりうるケースは以下となります。
隣家の一部がうつるケース
自宅を映しているつもりでも、隣家が常に防犯カメラに写ってしまうようなレンズの向きで設置してしまうと違法になる恐れがあります。映されている側はやはり常に監視されているような気持ちになり、プライバシーを侵害されていると感じてしまいます。
防犯カメラで定点観測したい場所によってはどうしても敷地外に防犯カメラのレンズを向けなければいけない場合もありますが、この時も事前に隣家への事情説明や合意形成を行わないまま防犯カメラを設置してしまうと、プライバシーの侵害と捉えられるリスクが高まります。
防犯カメラに通行人が映りこむケース
日常的に人が出入りするような場所に設置し、通行人や近隣住民の映り込みが多い場合も同様にプライバシーの侵害として訴えられるとこちらが違法となる恐れがあります。
自宅の防犯カメラで道路を映して良い?
玄関に面した道路を防犯カメラで映したいと考える一方、通行人が写り込んでしまう場所でもあるためカメラを向けてもいいのか判断に迷いますよね。
防犯カメラの撮影範囲に関しては明確に法律で定められていませんが、自治体ごとに設置のガイドラインを定めています。警察や自治体の見解は道路まで映すことに概ね肯定的であると言えます。
さきほど通行人の写り込みが多いとプライバシー侵害になりうると説明しましたが、一方で公道は家の中とは違いそこを歩いている時点である程度不特定多数の人とすれ違い、見られることを前提とした場所であると認識しているとみなすことができ、プライバシーの保護に関しても一部権利を放棄していると考えられます。
また、世田谷区成城エリアの治安向上に寄与した「成城モデル」において、自宅先の公道まで防犯カメラで映すという呼びかけが功を奏したという裏付けが存在します。
実際に公道まで映さないと自宅侵入者はもちろん、自宅近隣でひったくりや事故が発生した時の犯人特定が難しいという事情もあり、公道を映すのはOKという解釈となっています。
プライバシーの侵害になった裁判例
防犯上の利益が大きく、肯定的に捉えられることも多い自宅の防犯カメラですが実際に防犯カメラの撮影をめぐり裁判になったケースもあります。
事案
被告はマンションの共用部に防犯カメラを4台設置しました。
この防犯カメラが設置されたことで常に玄関口を撮影されていることに対し、4人の近隣住民(原告)が被告に対しプライバシーの侵害としてカメラの撤去と損害賠償金を求めました。
判決
防犯カメラの撮影は「撮影の場所、撮影の範囲、撮影の態様、撮影の目的、撮影の必要性、撮影された映像の管理方法等諸般の事情を総合考慮」して合法か違法かを判断することとなりました。
この結果、4台のうち1台は常に原告の入退室といった日常生活を撮影し、プライバシーの侵害にあたると判断され、撤去と賠償金の支払いが認められました。
自宅の防犯カメラにおける3つの注意点
このように、防犯カメラは場合によってはトラブルを招き、違法となる恐れもあるため近隣住民とのトラブルを防ぎつつ、適切に防犯カメラを活用するために気をつけるべき3つの点をおさえておきましょう。
プライバシーを侵害しない位置に防犯カメラを設置する
可能な限り防犯したい特定の場所のみが映るように、防犯カメラのレンズを向けることが大事です。特に隣家が部分的に映ってしまう場合は事前に相談したり、プライバシーの侵害にあたる盗撮ではなくあくまで防犯目的で撮影していることがわかるように「防犯カメラ設置中」といったステッカーを貼ることも検討しましょう。
プライバシーマスクを活用する
防犯カメラの機能にプライバシーマスクがある場合はこれを活用するのも一つの手です。これはどうしても自宅の敷地以外の部分や映したくない箇所がカメラの画角内に入ってしまうときに黒塗りなどで隠すことができる機能です。こうすることでみだりにプライバシーを侵害することなく防犯上必要な箇所のみを撮影することが可能です。
警察以外への第三者への公開は避ける
防犯カメラで撮影した動画をSNSなど不特定多数の人の目に触れる場所に公開しないようにしましょう。個人情報の漏洩にあたります。ただし、実際に自宅や近隣で事件が発生し、犯人特定のために警察へ情報提供する形で防犯カメラの録画データを共有する場合、正しい手順を踏んでいれば個人情報の漏洩にはならないため問題ありません。
まとめ
以上、自宅の防犯カメラの設置が違法になりうるケースや気をつけるべきポイントについて解説しました。犯罪を防ぐために設置した防犯カメラが原因で近隣住民とのトラブルが引き起こされてしまっては元も子もありません。
スリーボーダーでは防犯カメラ設置時にテスト撮影を行い、プライバシーの侵害など違法にならないようなレンズの向きかどうか、しっかり撮影したい部分が適切に画角に収まっているかを確認するため安心して防犯対策を始められます。
防犯カメラにお悩みの方はぜひスリーボーダーまでご相談・お問い合わせください。